聞き取り困難症・聴覚情報処理障害(LiD/APD)
当事者ニーズに基づいた聴覚情報処理障害の診断と支援の手引きの開発 AMED
聴覚情報処理障害の症状を示す小児の学習支援のための検査法および補聴技術の開発 科研費

当事者の方へ

LiD/APDと言われたら

医療機関を受診しよう

 LiD/APDであるかどうかを診断するためには、様々な検査が必要です。日本ではまだ診断基準が定まっていないため、検査結果から総合的に判断することになります。一言にLiD/APDといっても、背景要因や聞き取りにくさの程度・どんな状況で聞き取り困難になるかといった特性は異なるものです。自身の詳細を知ることで自分にとって最善の対処法を知ることに繋がり、また、別の病気や障害が隠れていないかも調べることができます。


どのような検査をどの程度行うかは医療機関によって異なりますが、ここでは大阪公立大学医学部附属病院の例を紹介します

質問票による聴覚認知検査

  • 聞き取りの困難さの特性と程度を調べる検査です。
  • 自覚症状がどれくらいあるか、どんなシーンで聞き取りにくさを感じるかなどをチェックします。
  • あまり考え込まず、大体これくらい、と思うレベルを選びましょう。

聴力検査

  • LiD/APDであると診断するためには【聴力に異常が無い】ことが前提になります。
  • 5種類の聴力検査を行い異常が無いか再確認します。この段階で軽度難聴がみつかるケースもあります。
    • 純音聴力検査、語音聴力検査、音場語音聴力検査(騒音化と静寂下)、ティンパノメトリー、OAE(耳音響放射)検査
  • まずは基本的な「聞く」検査でほかの聴覚障害である可能性を取り除きます。

聴覚情報処理検査(APT)

  • 複数の話し声や雑音で負荷をかけた状況においての聞き取りを評価し、聞こえの特性を調べる検査です。
  • 基本の7種類の検査から当事者に必要なものを実施します。
    • 両耳分離聴検査、早口音声聴取検査、ギャップ検出閾値検査、雑音下聴取検査、両耳交互聴検査、聴覚的注意検査、複数音声下聴取検査
  • 検査時間は約30~50分程度です。場合によっては設定を変更し、追加検査を行います。

脳波の測定(必要に応じて行う)

  • ABR(聴性脳幹反応)検査、ASSR(聴性定常反応)検査が行われる場合もあります。
  • 脳波で聴力を見る検査であり、自覚的な反応が必要ないため客観的な検査結果が期待できます。
  • この2つの検査は正確な測定の難しい乳幼児にも適しています。

画像検査(必要に応じて行う)

  • 脳卒中など、脳へのダメージが疑われる場合にはCT検査・MRI検査が行われます。
  • 脳梗塞や脳出血などにより、神経経路の片側にだけ損傷が起こった場合にもLiD/APDの症状が現れます。
  • 脳の損傷が原因である場合、聞き取り困難の症状があることにすぐには気づかれないこともあります。

発達面の検査

  • 神経発達をみる「ウェクスラー式知能検査」は、脳の特性の個人差を測定することが目的です。16歳以上は成人用のWAIS、16歳未満は子ども用のWISCを用います。
  • 4つの指標にかかわる設問に回答してもらい、それぞれの指標得点で能力のバランスをはかります。
    • 言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリー指標、処理速度指標
  • また、小児においては言語面の検査も必要に応じて追加します。

心理面の検査

  • ストレスや不安な気持ちなど、心の不調がLiD/APDの症状につながっていると考えられる人もいます。
  • 抑うつ性、情動知能、不安の程度を4つの検査で調べます。選択式のため難しく考えず、軽い気持ちで受けましょう。
    • SDS(うつ性自己評価尺度)検査、EQS(情動知能スケール)検査、STAI(特性不安尺度)検査、LSAS-J(社交性不安)検査
  • 心理的な問題があれば、専門的なカウンセリングや治療、問題を解消することによって聞き取り困難の症状緩和が期待できます。

LiD/APDと診断されたら

 聴力に異常が無いのに原因不明の聞き取りにくさに悩んでいた人にとって、LiD/APDが原因だと判明するとホッとする人が多いようです。聞き取れないことによってネガティブな評価を受けたり、自己評価が低くなっていた人も自分自身を責める必要が無いと知って前向きに受け止める傾向にあります。
 一方で、障害という言葉にショックを受ける人も少なくありません。しかし、自分の具体的な特性や困難を知ることによって自分に合った対処法や改善法を選択できます。早めに診断されることは、日常生活の工夫が可能となって適応力が向上する大きな助けとなるでしょう。