本研究の目的は、3年の研究期間で、聴覚情報処理障害(LiD/APD)の小児から成人の実態を明らかにするとともに、聴覚情報処理障害(LiD/APD)に苦しむ⼈に寄り添った、あくまで臨床に基づいた支援のための検査・診断法の確立を図りつつ、介入・支援方法を開発し、「LiD/APD診断と支援の手引き」の作成を目指しています。これにより医師は、LiD/APDの適切な診断を⾏うことができます。
これを、当事者やその家族を含めたその周辺の人々、広く社会全体に公開、広報することにより、LiD/APDに対する正確な知識を、社会を構成する誰もが持つことで、隣にいるLiD/APDを持つ人に適切に必要な支援を提供することで、配慮が可能になり、当事者の円滑な社会参加が可能になることが最大の成果であると考えています。
「LiD/APDに苦しむ人に寄り添った支援を早急に」
3年の研究期間で、具体的な成果として、
実態調査に関しては、大阪教育大学での大規模調査について倫理委員会通過後に11月末よりアンケート実施しました。当初1月初旬で締切予定でしたが、回収率を上げるため2月中旬まで延長を行い、現在、結果の解析を行なっています。
実態検査の当事者会の調査も倫理委員会承認後、1月からアンケートを実施しました。こちらは2月上旬に締切り、現在解析中です。
症例登録研究に関しても、倫理員会の承認が1月におり、分担施設の実施許可を待って、登録開始予定です。
支援の手引きの開発に関しては、登録された症例の治療訓練の分析を経て効果的な支援方法の開発を試みたいと考えています。
LiD/APDという概念の広まりに連れて、医療機関を受診する聞き取り困難を持つ症例は増加しています。LiD/APDの多くを占める、発達障害、不注意、記憶など認知の偏りによるもの、心理的精神的な問題によるものなど、鑑別には多くの検査が必要となっています。
当科では、問診、自覚的、他覚的聴力検査、音場語音検査(騒音下)、LiD/APD関連検査、発達検査、画像診断などを用いて診断を行なっていますが、検査希望者が増加し診断に多くの時間を要する状態が続いています。また、問診より、聞き取り困難により心理的に苦しい思いをしている患者が多く存在する事が明らかになっています。そこで私たちは診断により聞き取り困難に対しての、自己対応、周囲への環境調整が可能となるように、言語聴覚士による助言、医師による診断書、意見書の発行などを積極的に行なっています。今後、日本における診断基準の作成、原因に応じた、補聴器、リハビリテーションなどの開発が望まれます。
AMED研究においてLiD/APDの診断と支援の手引きの作成を進めます。